秘密
 中学最後の遠足の日。僕はその日の帰り、太一の家に遊びに行った。
太一は僕の親友であり、大好きな人でもあった。
太一の部屋はとてもシンプルだ。でもそれは部屋の面積が狭いからあまりゴチャゴチャと物を置くスペースがないだけなのかもしれない。
パイプベッドとテレビと机。彼の部屋はそれだけ置くとほとんど空きスペースがなかった。
僕らはいつもベッドに寄り掛かって話をしたけど、その時足を伸ばすスペースは残されていなかった。
今日は秋晴れで、遠足には最高の天気だった。
僕と太一は遠足のおやつの余りを足元に広げ、それを適当につまみながらたわいのない会話を交わしていた。
「明日、国語の時間自習だったよね?」
「え、本当?」
「そうだよ。きっと作文を書かされるんだ」
「作文か……」
「まぁ適当に書いて、あとは遊んでればいいじゃん」
彼はそう言ってチョコレートを1つ口に入れた。口の中でチョコを溶かしながら微笑む彼はとても綺麗だった。
尖った顎と、くっきり二重の目と、猫みたいに柔らかそうな髪が、嫌でも僕を興奮させた。
「汗かいたから着替えるよ」
太一はそう言ってベッドの下の収納ケースを開け、そこから赤い色のTシャツを取り出した。
その後彼はためらいもなく学校指定のTシャツを脱ぎ捨て、新しい赤のTシャツを頭からかぶった。
ほくろ1つない彼の真っ白な背中が、またもや僕を興奮させた。
「膝に穴が開きそうだな」
太一は学校指定のジャージの膝を指で軽く触り、薄くなった生地をちょっと気にしていた。
それからしばらく、沈黙がその場の空気を支配した。部屋の中には窓の外の光が斜めに入り込み、その中を埃が舞っていた。
「ねぇ、アキ……」
「ん?」
僕が光に舞う埃を見つめていると、太一がそう言って声を掛けてきた。
僕の名前はマサアキ。彼は昔から僕の事をアキと呼んでいた。

 次の瞬間、突然太一が僕の肩を抱いた。その時僕はいったい何が起こったのか分からずにただ彼の目をじっと見つめていた。
「好きだよ、アキ」
太一は強引に僕を抱き寄せ、濡れた唇を僕の口に押し付けてきた。彼の唇は、ほんのりチョコレートの味がした。
「アキも俺の事好きだろう?」
そう言われた時、太一の顔がすぐそばにあった。僕の心臓は高鳴り、首筋を汗が流れ落ちていった。
たしかに僕は太一の事がずっと好きだった。でも彼と両思いになるのは計算外だった。
「俺もずっとアキの事好きだったんだ」
その後、恐れていた事が起こった。太一は僕を抱き締めながら僕のジャージのズボンに右手を掛けたんだ。
その時僕は息を呑む暇もなかった。
太一の手は僕が身に着けていた紙オムツの中へスルリと滑り込んだ。すると、その手はピタッと止まった。

*   *   *

 まさかこんな事になるとは思ってもみなかった。
僕はあまりのショックに大泣きしてしまった。
僕は昔から尿意をコントロールする事ができず、いつもこうして紙オムツを着用していた。
それは誰にも知られたくない僕の重大な秘密だった。しかも太一には絶対に絶対にその事を知られたくないと思っていた。
「アキごめん。泣くなよ」
太一は泣きじゃくる僕を抱き締めて必死に慰めようとしていた。
でも僕はこの時どんな慰めの言葉も聞き入れる事ができなかった。
もう終わりだ。太一はきっと今この瞬間に僕の事を嫌いになってしまった。
「大丈夫だよ。安心して。俺はどんな事があってもアキの事が好きだから」
そんな彼の言葉も僕の耳は素直に聞き入れる事ができなかった。僕はこうして泣いている間にも少しずつ紙オムツを濡らしていた。
いったい僕はどれだけ長い時間彼の部屋で泣きじゃくっていたんだろう。
太一は僕が泣き止むまでずっと抱き締めてくれていた。何度も 「好きだよ」 と言いながらずっとそばにいてくれた。

 「少しは落ち着いた?」
僕の涙がようやく涸れかかった頃、太一が優しい目をしてそう言った。
彼の綺麗な顔は、涙の向こうに歪んで見えた。
抱き締めてくれている彼の温もりは、ほんの少しずつ僕の気持ちを落ち着かせようとしていた。
「アキ、俺は絶対何があってもアキの味方だよ」
優しい声が、徐々に僕の鼓膜を刺激した。狭い部屋の中には彼の愛が溢れていた。
「いつもオムツしてるの?」
そんな事、普通ならとても答えられるものではなかった。 でも彼の声がすごく優しかったから、僕はその優しさに賭けてみた。
僕が小さくうなずくと、太一の手が僕の頭を軽く撫でてくれた。
「気付いてあげられなくてごめんね」
彼は秋の日差しを浴びながら本当に申し訳なさそうにそう言った。ちゃんと僕の目を見て、真剣な口調でそう言ってくれた。
「オムツしてないとおもらししちゃうの?」
僕は小さくうなずいて、Tシャツの袖で涙を拭った。もうこうなったらすべてを隠し続ける事は絶対に無理だと思っていた。
「そうか。ずっと1人で悩んでたんだね。かわいそうに」
そんなふうに優しい言葉を掛けられると、また涙が出てきた。僕は太一の胸でもう一度存分に泣いた。
着替えたばかりの彼のTシャツは僕の涙であっという間に汚れてしまった。
「俺、アキの事好きだよ」
太一は僕の耳元でそう囁いた。それから僕の耳を軽く噛んで、その後温かい舌で舐めてくれた。
すると僕は急に気持ちがよくなってしまった。その瞬間に僕の肉体は全身が性感帯になった。
彼の手が僕に少しでも触れると、興奮して頭の中が真っ白になった。

 太一は僕を背中から抱き締め、もう一度僕の耳を横から噛んだ。そして彼の右手が再び僕の紙オムツの中へと滑り込んだ。
「んっ……」
彼の部屋は狭いから、僕は足を伸ばす事ができなかった。僕は膝を折り曲げて壁を蹴り、彼の手の感触を全身で味わっていた。
「あったかい。おもらししちゃったの?」
太一は紙オムツに手を入れた感想を率直に口にした。僕のあそこはもう大きくなっていて、彼の手はその後すぐ僕そのものに触れた。
太一の指が僕に触れ、やがて僕そのものを素早くこすり始めた。
すごく気持ちがよくて、思わず声が出そうになった。
僕はきつく目を閉じて奥歯を噛み締め、声を出すのを必死に堪えた。
でもそっちに気を取られていると今度はあそこが緩んでしまい、紙オムツの中に勢いよくおしっこが溢れた。
きっと僕はその瞬間に太一の右手をびっしょり濡らしてしまった。
「アキ、感じる?」
耳のそばで太一の声がした。
でも僕の意識はどんどん現実から遠ざかり、彼の声もしだいに遠のいていった。瞳の奥には、秋の日差しがまだ微かに残されていた。
「替えのオムツ持ってるんだろう? あとで俺がちゃんと全部やってあげるからね」
遠ざかるその声が微かに耳に響いた時、僕は紙オムツの中へたっぷり性欲を吐き出した。
その瞬間は異常に興奮し、体が痙攣した。

 僕はマスターベーションをする時、頭の中でいつも同じ事を考えていた。
僕が裸でベッドに横たわると太一がまっさらな紙オムツを持って現れ、僕のお尻の下にそれを滑り込ませてくれる。
それから彼は温かい手で僕のあそこを包み込んでくれるんだ。
きっともうすぐそれが現実になる。
その時僕は、またオムツを濡らしてしまうかもしれない。
END

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