好きだから、言えない 3
 俺が勇気の部屋へ来るのは初めてではなかった。 彼と付き合い始めて3ヶ月になるけど、その間に4回か5回ぐらいはここを訪れた記憶がある。
「貴ちゃん、そのへんに座って」
ワンルームの部屋に明かりを灯した後、勇気はそう言って俺に緑色のクッションを渡してくれた。
彼の部屋は、すごく男らしい部屋だった。ベッドの上には朝起きたままの形でふとんが乗っかっているし、四角いテーブルの上には雑誌や使用済みのグラスや灰皿などが所狭しと並んでいる。 そして薄いカーペットの上には学校の教材やシャープペンシルなんかが無造作に置いてある。
だけどさすがに調理師学校へ通っているだけあって、キッチンだけはピカピカに磨き上げられていた。 そこには10円玉の色に似た鍋や、普通の家では見かけないほど大きな包丁などが、きちんと整理して並べられていた。

 俺はクッションを壁に押し付け、とりあえず床の空いたスペースに腰かけた。
勇気は床の上に置いてあった学校の教材を急いで本棚にしまい入れ、テーブルの上に置いてある物は全部まとめてベッドの下へしまいこんだ。
それから彼はテレビのスイッチを入れ、やっと俺の隣へ来て座ってくれた。
「貴ちゃん、好き」
彼の白い手が俺の頬に触れ、その後すぐに勇気の唇が俺の唇に重なった。
いつも料理の味をたしかめる彼の舌が、俺の舌を味わおうとしている。
俺はもう我慢ができなかった。彼の部屋へ泊まる事がきまって以来ずっと体がムズムズしていた。
ここへ来るまで運転している間も、すぐに車を止めて彼を抱いてしまいたいと思っていた。
濃厚なキスを続けながら彼のTシャツの下へ手を入れると、勇気は俺がその気になっている事をすぐに感じ取った。
彼は足元に置いてある電気のリモコンで部屋の明かりを消し、それと同時にTシャツを脱ごうとする仕草を見せた。

 2人してベッドへ倒れ込むと、すでにTシャツを脱ぎ捨てた勇気が今度は俺のカッターシャツを脱がせた。
部屋の中にはテレビの音が小さく流れ、その光が時々勇気の頬を照らしていた。
彼のジーンズのジッパーを下ろすと、すぐに硬い物が手に触れた。その後両手を使ってジーンズとパンツを一緒に膝のあたりまで下ろすと、勇気は自分の足で蹴ってジーンズを脱ぎ捨て、こんな物いらないと言いたげにそれをベッドの下へ投げ捨てた。
勇気の上になり、その胸に存在する突起を舌でなめると、彼の息が急に早くなった。
彼は苦しそうに息を吐きながらもちゃんと俺の腰に手を回してズボンを脱がせてくれた。
勇気の手が俺の硬い物に触れると、俺の息も早くなった。彼の手の動きが早くなると、俺の息ももっと早くなる。
俺はその時もうたっぷり汗をかいていて、顎のあたりから滴り落ちる汗の粒が勇気の胸を濡らした。
その胸の突起を軽く噛みながら、今度は5本の指で彼の硬い物をもてあそぶ。すると勇気が堪えきれずに声を張り上げた。
「ん……あぁ……あぁ!」
俺は指の動きは決して止めず、テレビの光に照らされる彼の表情をじっと見つめていた。 勇気はきつく目を閉じて、口は半開きで、額に薄っすらと汗をかいていた。
「貴ちゃん……早く」
俺は彼がそれを言う瞬間が1番興奮する。勇気は普段何も欲しがらない。その彼が自分を欲するこの瞬間が、1番興奮する。
俺はすでにかなり濡れている右手の指をそっと彼の中へ入れてみる。 勇気は一瞬痛そうな顔をするけど、俺の指が彼の中をかき回すとそれが途中で快感に変わるようだ。
右手の指を彼の中へ入れ、左手の指で硬い物を触ると、勇気は体をくねらせてその刺激に耐えようとする。
「う……ぅ」
彼は枕に顔を押し付けて声を出すのを堪える。でも、そんな努力は無駄なだけだ。
俺は彼の中に入れていた指を取り出し、彼が本当に欲しがっている物を与えてやる。 俺が硬い物をぐいぐい彼の中へ入れると、勇気は泣き出しそうな声を張り上げて頭を抱える。 そしてすぐ手の届く所にある彼の硬い物に触れると、とうとう彼は泣き出してしまう。
「いじわる……」
勇気は頬を伝う涙を拭き取る余裕もないままにそうつぶやいた。
その瞬間、胸のあたりに彼の中から飛び出した熱い体液を浴びせられた。勇気は俺から顔を背け、爪を噛みながらまだ泣いている。
俺はその後すぐ全身がしびれ、彼の胸に倒れこんだ。彼は太もものあたりに俺の熱い体液を浴びながら両手で俺の髪をなで、「好きだよ」 と耳元で優しく囁いてくれた。

 彼はベッドの上でおとなしく仰向けに寝ていた。
俺はティッシュを使って彼の腹の上や足に飛び散った精液を拭いてやり、その後で濡れてしまった自分の体も丁寧に拭いた。
テレビの光が彼の頬に残る涙を照らし、ベッドに横たわるその細い体も照らしていた。
全部処理が終わると勇気は俺の手を引いて自分の隣に寝るよう要求し、俺たちはその後夏用の薄いタオルケットの下で抱き合った。
「気持ちよかった」
勇気が俺に寄りそいながら、小さくそうつぶやいた。彼を抱きしめて 「かわいいよ」 と言ってやると勇気は幸せそうに微笑みながら目を閉じた。
「あとでもう1回してね」
俺は目を閉じたまま嬉しそうにそう言う彼が本当にかわいくて、しばらくその顔に見とれていた。
俺たちは、いったいどっちが先に眠ってしまったんだろう。
それはよく分からないけど、とにかくその後先に目を覚ましたのは間違いなく俺の方だった。
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