汚れた恋人
 今日の夕方、宅配便で大きな荷物が届いた。僕はその中身をすぐに取り出して、ベッドの上にそっと寝かせた。
僕はお年玉の残りを使って、思い切った買い物をしたのだった。
それはオーダーメイドの枕だった。僕が手に入れたのは、真壁くんの写真が投影された、等身大の抱き枕だ。
注文の方法は簡単だった。寸法を選んで好きな写真を送れば、それをプリントした枕が届く手はずになっていた。そして今日、遂にそれが僕の所へ送られてきたのだった。
学級写真を切り取ったものだから、枕の彼は制服姿だった。ブレザーを着て、まっすぐに立って、キリッとした目で僕を見つめている。
サラサラな髪は肩の上で踊り、ピンク色の唇はきつく結ばれていた。
真壁くんはすごく綺麗で、いつもキラキラしている。そんな彼は、僕の憧れの人だった。

 待望の枕をベッドに寝かせると、窓をカーテンで覆って、それからすぐに裸になった。床の上にはゲームソフトが散乱していたけれど、掃除をするのは後回しにした。
僕はベッドに横になって、柔らかな枕を両手に抱いた。
真壁くんの唇に、自分の唇を重ねてみる。その感触は本物とは程遠いものだったけれど、それでもすごく興奮した。
ここでは真壁くんは僕だけの恋人だ。彼の目は僕しか見ないし、黙ってどこかへ行ってしまう事もない。
部屋の中はとても静かで、本棚の影が2人を包み込んでいる。
体が火照って、ペニスが硬くなってきた。僕は股の間に枕を挟んで、足でぎゅっと締め付けた。
制服のズボンは紺色だ。真壁くんのペニスは、その奥に隠れて見えなかった。だけどそれが、余計に妄想を掻き立てた。
僕と愛し合う時、彼はどんなふうだろう。やっぱりすごく興奮して、すぐに股間を膨らませるのだろうか。
最初は静かに抱きしめ合う。それから長いキスをして、2人で気持ちを盛り上げていく。いよいよ体を合わせると、息を弾ませながら腰を動かす。
彼は時々愛の言葉を囁いてくれるかもしれない。それはきっと、耳がくすぐったくなるような甘い言葉だ。
その時僕は、軽く笑って真壁くんを見つめる。すると彼も、優しい目をして微笑むだろう。

 枕の彼を強く抱き寄せて、硬くなったペニスをグイグイ押し付けた。
ペニスが擦れると、すごく気持ちが良くなって、ますます興奮が高まってきた。
僕があまりにも早すぎたら、彼は満足できないかもしれない。だからなるべく射精は遅らせたい。
それでも枕に押し付けるのをやめられなかった。ベッドの上での妄想オナニーは、想像以上に気持ちが良かったからだ。
ハスキーな声が僕を呼ぶ。それに応えるように、唇にキスをする。
枕を抱いて腰を振ると、すべての景色が揺れ動いた。テレビも、本棚の影も、僕に合わせて揺れている。
真壁くんは、僕の腕の中で暴れていた。彼も気持ちが良すぎて、冷静ではいられないのだろう。
柔らかい肌が、ペニスを擦ってくれる。真壁くんは、決して休まず愛撫を繰り返す。
首筋を汗が流れ落ちていった。体の奥から込み上げてくるものが、僕の心を震わせる。
僕を導いてくれるのは、彼しかいない。今までも、これからも、それはずっと変わらない。
「あぁ……!」
フィニッシュの瞬間に、小さな声が溢れ出た。ベトベトした体液が、枕の上に飛び散った。
体の力が抜けていき、彼の胸に頬を寄せる。
僕は買ったばかりの抱き枕を、あっという間に汚してしまった。だけど家で手洗いできるはずだから、それほど気にする必要はないだろう。
それでも枕の洗濯は、もう少し後にしたかった。今はしばらくこのままでいたい。目を閉じて、夢見心地で、彼との行為を思い返したい。
僕はベッドの隅に手を伸ばして、ティッシュを2〜3枚掴んだ。枕に飛び散った体液は、ひとまずそれで拭き取った。

*   *   *

 自分でも気付かないうちに、居眠りをしていたようだ。真壁くんとの行為で、少し疲れてしまったのかもしれない。
ベッドの上で目覚めた時、部屋の中は随分暗くなっていた。
眠っていたのは、30分ぐらいだろうか。よく覚えていないけれど、その間はとてもいい夢を見ていたような気がする。
真壁くんは、僕に添い寝をしてくれていた。これからは、ずっとこんな日が続くんだ。
学校では遠くから見つめる事しかできないのに、今は憧れの彼がこんなに近くにいる。
「真壁くん……」
彼の名前を呼んで、すぐに体を抱き寄せた。するとその時、枕の下の方がやけに湿っている事に気付いた。
僕は慌てて狭苦しい部屋に明かりを灯した。淡い光の下で枕を見つめると、その様子に愕然とした。
彼のズボンの股下あたりに、濡れたシミができていた。僕は真壁くんを抱いたまま、オネショをしてしまったのだった。
「やっちゃった……」
ため息混じりに呟いた。
オネショはもう卒業したと思っていたのに、久しぶりにやってしまった。中学生になってからは、多分初めてのオネショだ。まさか自分が彼におしっこをひっかけるなんて、思ってもみなかった。

 僕はまた彼を汚してしまった。こんな事になるなら、さっさと風呂場で枕を洗えば良かった。
そう思ってうなだれながら、枕の真壁くんをもう一度見つめた。
彼の股間は、おしっこを浴びてズボンの色が変わっていた。するとそこで、再び妄想が掻き立てられた。
事情を省いてそこだけ見ると、まるで彼がおもらししたかのようだった。
僕もたまにはオネショをする。だったら、同級生の彼にもそういう事があるかもしれない。
そんな時、彼はいったいどうするのだろう。恥ずかしそうに苦笑いをして、こっそりパンツを脱ぐのだろうか。
おもらしした後だから、彼のペニスはきっとしぼんでいる。そこにはおしっこが纏わりついて、ダイヤのように光っているかもしれない。
おしっこに濡れたパンツを、この手で脱がせてあげたい。そして光り輝くペニスを、優しく可愛がってあげたい。そんな妄想が膨らむと、また興奮してきた。
「ダメだ。我慢できない」
僕は明かりも消さずに、ベッドの上でもう一度真壁くんを抱いた。
濡れた枕にペニスをグイグイ押し付けると、気持ちが良くてたまらなかった。
いったい僕は、これからどれだけ真壁くんを汚すのだろう。早く洗って綺麗にしてあげたいのに、全然そんな暇がない。
もちろんそれは、彼のせいだ。どんな時も魅力的だから、汚れていてもすぐに抱きたくなってしまうんだ。
でも綺麗な彼には学校で会えるから、今はこれでいいのかもしれない。
真壁くんを汚す事ができるのは、僕しかいない。同級生は、キラキラした彼しか知らないはずだ。そう思うと、なんだかすごく嬉しくなってきた。

 遠くの彼なんか、もうどうでもいい。手の届かない人なんか、どこにでも行ってしまえばいい。
汚れた恋人は、僕の側にいる。
顔も体も擦り切れて、どうしようもなくボロボロになっても、きっと側にいてくれる。
そんな君が大好きだ。そんな君が、僕にはお似合いだ。
どんなに暴れてもいいし、おもらししたって構わない。すべての君を受け入れる準備はできている。
だからこのまま、一緒に楽しもう。こうして朝まで、君を抱いていたい。
END

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